デンゼル・ワシントンが監督を務めた『グレイト・ディベイター/栄光の教室』では、信じがたい、けれど実際に起こっていた人種差別の実態が明かされています。時代は1935年。黒人は白人と同じベンチに座れず、同じバスにも乗れず、同じ大学にもいけない状況でした。特に南部では黒人への差別がひどく、惨い仕打ちを受け命を落とす人も多数いました。まともな教育を受けられず、低賃金で肉体労働を強いられてきた黒人たちはどのようにして状況を変えていったのでしょう。

この映画では、すさまじい逆境を生き抜き、時代を変えてきた人々の苦悩と努力、そして勇気が描かれています。

デンゼル・ワシントンが演じたのはテキサス州のワイリー大学教授、メルヴィン・トルソン。彼は黒人初のディベートチームを結成し、将来を担う生徒達の指導にあたりました。ディベートチームに抜擢されたのは、問題児のヘンリー、芯の強いヒロインのサマンサ、シャイな牧師の息子ジェームズ。トルソンの厳しい指導にもめげずに、自身の使命を信じ、貫き通した3人の姿がとても爽やかです。

暴力、偏見、そして差別。当時の状況を変えるには、相手に自分の考えを伝え、理解してもらわなくてはなりませんでした。暴力や脅威で相手の行動をコントロールするのではなく、言葉という手段を使って自分の考えや価値観を伝える。その手段がディベート(討論)というものでした。

ディベートは、主題に対して異なる立場の者が意見を言い合う場です。自分の立場をデータや論理でサポートする。物事を理論を立てて話すだけではなく、相手の弁護を聞きながらその場で反論を組み立てなければならない。もちろん、言葉がどのように伝わるのかも影響します。話すスピード、抑揚、感情、表情、ジェスチャー。すべてが折り重なって初めて言葉に力が湧くのです。これがなかなか面白く、難しい。

主人公の3人にはそれぞれ個性があり、ディベート方法も「らしさ」が反映されていて見所が満載。特に紅一点のサマンサの感情こもった言葉力に注目していただきたい。

人を動かす言葉。未来を変える言葉。問題を解決できる言葉。

言葉には様々な魔法があります。

私もライターとして日々言葉に接しているのですが、言葉って本当に難しい… 自分の書きたい事がまとまらず、良いフレーズが浮かばないことは日常茶飯事。まだまだ勉強不足だなぁとひしひしと感じる今日この頃です。

人前に立つ勇気、自分の意見を信じる強さ、相手の言い分を理解しながらも相手を納得させる頭のよさ。全てを兼ね備えたディベートチームの3人は、卒業後、社会に多大な影響を及ぼす人として成長していきます。

日本での劇場公開は果せなかったものの、説得力があり、力強い作品です。

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