『サムサッカー』のマイク・ミルズが自身の経験を脚本化し監督したのが『人生はビギナーズ』。先日発表されたゴールデングローブ賞では、この映画でハルを演じたクリストファー・プラマーが助演男優賞を受賞しました。

妻に先立たれてからかれこれ数年。男やもめのハル(クリストファー・プラマー)、現在75歳。残りの人生は悔いがないよう自分に正直に生きていきたい……
「僕はゲイなんだ」
彼が決心したのは突然のカミングアウトでした。

45年間も連れ添った妻との間にはオリヴァー(ユアン・マクレガー)という息子がいるハル。ゲイであることを知っていながらも、何故ハルは結婚と家族という道を選んだのでしょうか。これには50~60年代アメリカの時代性が大きく関わっているようです。

当時は高校や大学を卒業すると同時に結婚し家庭を持つのが主流で、幸せへの近道と考えられていました。そして、ゲイに対する偏見や差別が尋常ではなかった時代。自身の性癖を隠して生きるか、もしゲイであることがバレてしまった場合はカウンセリングを強いられ、治療を受ける人が多数いました。そうです、当時はゲイであることは病気であり、治療できると思われていたのです。時代背景を見ていくと、ハルの選択にも納得できます。

しかし、正直でない結婚生活の中で育ち、いつも一人でいる母親の寂しげな姿を見てきた息子のオリヴァーは、恋愛や結婚にたいしてあまりにも現実的で消極的。妥協するくらいなら、一人でいるほうが楽と考えています。まさに、両親の結婚生活が反面教師となっている状態。

カミングアウト後、服装を変え、ゲイ・バーに足しげく通いつめ、新聞に恋人募集の広告まで出してしまう恋愛に貪欲な父親の姿を見て、オリヴァーは戸惑いを感じながらも、自分に正直に生きる素晴らしさを教わります。

素直に人を愛し、喜びを表現する少年のようなハルの姿を見ていると、「好き」という感情を覚えたての頃に味わった恋愛のドキドキやワクワクを思い出します。何もかもが新しく幸せいっぱいの時、ヒトは一番輝いているののかもしれません。

いくつになっても愛することを止めなかったハルは、結婚の反面教師ではなく、恋愛の伝道者としてオリヴァーの心に残るのでしょう。

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