現英国女王の父親にあたる、ジョージ6世。彼の知られざる悩みと努力と成功を描いた『英国王のスピーチ』は、期待以上の傑作でした。

幼い頃から吃音で悩み続け、頑固で短気なジョージ6世を演じたのはコリン・ファース。コメディー役が多い彼ですが、今回は、弱さと強さをあわせ持った複雑な役を見事に体現してくれました。プライドは高いけれど、王子としてのマナーをわきまえていて、どんな相手に対しても尊敬の念を持って接する彼。私が何より心を打たれたのは、彼が娘二人にお話をしてあげるシーンです。吃音のせいで、絵本の読み聞かせは上手くできないのですが、愛する娘達を一生懸命喜ばせてあげようとする姿が本当にステキ。彼の顔の筋肉の微妙な動きからは、吃音のもどかしさや情けなさかしみじみと伝わってきます。

もちろん、忘れてはならないのがジョージ6世を懸命に支える妻の存在。実は彼女、プロポーズを2回も断っているのです。視察をしたり、諸外国を訪問するなどの皇室生活が嫌でしょうがなかった彼女ですが、3回目のプロポーズで結婚を決めたのにはある理由があったのです。吃音を患うの夫には重要な公務は任されないだろう、と。つまり、彼と結婚してもきっと静かな生活を送れるのではと期待していたのですが…… 皆さんご存知の通り、彼女の想像通りにはなりませんでしたね。

けれど彼女はこう言っています。「女王という道しかないのなら、素晴らしい女王になるつもりです。素晴らしい王の妻として」。
吃音を受け入れると同時に、ジョージ6世のそばに寄り添い、彼が吃音を克服できるよう励し、信じ続ける。彼女のさりげない、けれど強い姿勢がジョージ6世を前進させたのかもしれません。

吃音、俗に「どもり」とも言われるのですが、その多くが心理的要素からくるものらしいのです。育った環境であったり、親や兄弟からのプレッシャーだったり、トラウマ的出来事がきっかけだったり。極度の心理状態に陥り、自信を失い、思うように言葉が話せなくなってしまう、口が強張って言葉が出なくなってしまう。吃音の度合いは様々にせよ、誰だって緊張すれば言葉を失うことはありますよね。

スピーチが上手くなるには、練習、練習、練習あるのみ!ってどこかで読んだことがあります。誰かに聞いてもらったり、自分のスピーチを録音して、スピードや声の抑揚を確認したりするのも効果アリだそう。でも何より大切なのは、自分の「快適ゾーン」から抜け出し、緊張や恐怖を乗り越えて、自らパブリックスピーチにチャレンジしていくこと、だそうです。経験を重ねることで自信がつく。場慣れすると、観客に直接語りかけたり、反応によってスピーチの内容を変えたりなんていう上級技も披露できるかも。

ジョージ6世の場合は、「快適ゾーン」から抜け出さなければなりませんでした。父であるジョージ5世が他界し、兄のエドワードはスキャンダルのために王位を捨ててしまう。第二次世界大戦が幕を開けようとしている最中、イギリス全国民は新たな王のスピーチを待ち望んでいました。

クライマックスのスピーチには威厳があり、誠意が溢れています。王としてふさわしく、国民の信頼を得るに値するものでした。

きっと自信がもらえます。観て、聴いて、感動してください。

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