宮崎駿さんが作り出す映画には、いつも力強いメッセージが込められています。観るものの心を強く揺さぶるような壮大なメッセージもあれば、痛いところをつかれるようなメッセージもあります。では、スタジオジブリ最新作、『コクリコ坂から』にはどんなメッセージが込められているのでしょうか?

宮崎駿さんインタビュー:なぜ『コクリコ坂から』を企画したのか

1963年が舞台になった『コクリコ坂から』では、父親を亡くすも、強くしなやかに生きる主人公、海の姿が描かれています。時は戦後の混乱期。物やお金は無いけれど希望があった時代を生きた少年少女たちの生き様は、ものが溢れかえっているにもかかわらず、希望が持てない時代を生きる現代の若者たちの姿とは異なって見えます。

宮崎駿さんはこう言っています。昔から人々は、どのように生きなければならないかを考えてきた。しかし、目先の数字や経済のことばかりに囚われてしまったばかりに、志が無い、可能性を信じない若者が多くなってしまった。そんな彼らのために、「ひとりの人間としてちゃんと旗を揚げることを」表現できる映画を作りたかった、と。

個人的な意見ですが、スタジオジブリは時代性を掴んだ映画を作るのが非常に上手いと思うんです。

1997年に公開された『もののけ姫』は人間と自然の関わりを基盤とした作品ですが、一番のテーマはアシタカが辿る「自分の運命を受け入れて、それでも強く生きていく」道。1997年頃といえばバブル崩壊後から続く就職氷河期の真っ只中。企業破綻やリストラに遭う人も少なからず。『もののけ姫』は、「不条理な境遇の中でも一生懸命前へ進もう」というメッセージを力強くストレートに送っています。

2001年に公開された『千と千尋の神隠し』では小学校4年生の千尋の成長が描かれていますが、冒頭の千尋は臆病で一人では何もできない女の子。けれど千としての生活を通じて少しずつ自立し、生きる力を学んでいきます。映画館には多くの小学生が足を運びました。しかも彼らは92年頃より「ゆとり教育」を受けて育った子どもたち。千尋が車内でぼけーっとしている姿、母親の腕にしがみつく様子は、彼らそのものだったかもしれないと思うのは私だけですか? 彼らが生きる力を学ぶのはいつなんでしょう……

2010年の『借りぐらしのアリエッティ』はその名の通り、人間からものを借りながら暮らす小人達の話です。私たちの生活も、カーシェアリングやルームシェア、レンタルドレスなど、買うのではなく借りることが主流になってきています。無駄を省き合理的に生きる。ステータスを求めるのではなく等身大で生きるのが現代風なのかも。原作はイギリスが舞台になっているのですが、設定を日本に変えたのは現代人が外国に憧れを抱かなくなったから、だそう。監督は、好奇心に欠けていて現状満足な現代の日本人に不満を抱いているよう。冒険やロマンを求めて、自分の可能性を試す。宮崎駿監督が好きな人間像はこんな感じ?

さて、『コクリコ坂から』のメッセージは観客に伝わるのでしょうか?

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