現在、ある書籍の執筆をしています。ライターの仕事を始めて早3年が経とうとしていますが、日々勉強の毎日です。インタビューをして記事をまとめて、著者の方々に原稿を確認してもらって、編集者や出版社と内容を議論しながら、少しずつ紙面が出来上がってきています。一つでも間違えがあったり、著者が考えていることと別の内容を載せてしまえば、信用問題になりかねない… 執筆する際は、念には念を入れて、十分なリサーチを重ねて、と思っています。

さて、こんな私の毎日を彷彿させるかのような映画、『ニュースの天才』を見る機会がありました。

あらすじ
アメリカの政治雑誌「ニュー・リパブリック」に在籍する、スティーブン・グラスは、20代という若さで同誌の編集委員になるほど周りから才能を認められ、信頼も厚い記者。政治雑誌にもかかわらず、彼の書く記事はエンターテイメント性が高く、読者からも好評を得ていました。最新記事「ハッカー天国」では誰も知らなかったハッカーの世界を暴き、彼の名は出版界に知れ渡ります。しかし、記事の内容に疑問を抱く人々が現れ…

映画は、1989年に実際に起こった事件がベースになっているとのこと。スティーブン・グラスは実在する記者ですし、彼が執筆した記事もすべて出版されたものです。

この作品が面白いのは、映画の中で記事が出版に至るまでの経緯を忠実に説明しているところです。
記事、特に新聞の記事は一体どのようにして紙面に載るのでしょうか。

この映画によると…

1 記者が記事を書く(この時の取材ノート、録音テープ、写真、メモなどは大事な証拠品)
2 シニア編集者が記事の内容をチェックし、記者が修正を加える
3 別の編集者のチェックが入り、記者はさらに修正を加える
4 事実確認係(ファクトチェッカー)が記事の信憑性を徹底的に調べ上げる:日時、タイトル、地名、所説を確認
5 コピー編集者が内容を確認
6 弁護士が記事の法的見解を確認
7 編集長がチェック
8 レイアウト&印刷
9 2~6を繰り返す
10 最後にそれぞれが最終確認をし、印刷へ

とまあ、こんな具合に新聞・雑誌記事は出来上がっていくようです。このシステムは当時編集者であったマイケル・ケリーが雑誌「ニューヨーカー」時代に適用していたものなのだそう。非常に厳しいチェックを通過して紙面は出来上がっているんですね。

複数の人が内容を確認し、記事の信憑性は高いはずなのですが、そこには幾つかの落とし穴が。問題なのは、一般人の生の声や誰も知らない新しい情報などです。事実確認をするのが難しく、頼りは記者の記憶やメモ書きだけだったりする場合も… もちろん、政治関連の雑誌ともなれば、オフレコの情報は多い訳で。

記事作成の抜け穴をすり抜けてしまったのが、スティーブンが書いた記事なのです。しかも、ニュー・リパブリックで出版された41の記事のうち、27もの記事が見事にすり抜けてしまったというのです。彼が巧妙すぎたのか…

彼が取った行動の裏には「記者として名を馳せたい」という気持ちがあったのかもしれません。しかし、同じライターとして、見ているこっちがハラハラしてしまい、胃が痛くなるほどでした。

小心者の私には記事をでっち上げられるほどの勇気はないし、ウソをつき続けられるほど、頭の回転は速くない。私は私なりのペースで、私の言葉で事実を紡いでいこうと確信しました。

マスコミや出版業界に興味のある方は是非観て下さい!

ちなみに書籍の出版は来年の1月か2月になる予定ですので、詳細が決まったらご報告させていただきます。

 

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