マイレージ、マイライフ

オープニングタイトルでは空から見える様々な地形や風景がコラージュのようにスクリーンを飾ります。遠くから眺める畑や高速道路は幾何学模様のように意味深できれい。
私の好きな本、「Earth from above(空から見た地球)」そのもの。

出張というものをしたことが無い私にとって、空港や飛行機は非現実的で特別な空間。旅の準備から空港までの道のり、そしてフライトまでもが大切なバカンスの一部なのですが、別の人にとってそれらはただの通過点、むしろ目的地に行くために越えなければならないハードルなのかもしれませんね。ジョージ・クルーニー演じる主人公、“リストラ宣告人”のライアンにとってフライトは全くの別物。

All the things you probably hate about travelling -the recycled air, the artificial lighting, the digital juice dispensers, the cheap sushi- are warm reminders that I’m home.
(誰もが嫌う旅特有の、使いまわしの空気や冷たい電光、電動ジュース機、安い寿司バーなんてものが僕には温かく、家にいる気分にさせてくれる)
こんなことをいえるライアンっていったいどんな人?

毎日のように国内を飛び回り、1年の大半を空の中で過ごす彼にとって空港は家であり、飛行機は脚のように慣れ親しんだ存在なんです。家族とは連絡を取り合わない、打ち解け合える親友や仲間もいない、家で待っている彼女もいない。リストラ宣告人として嫌われ役を買って出た彼にとって、人間関係は面倒で厄介なもの。

これは人生の重荷やしがらみを嫌うライアンのドライで苦いストーリー。

日々どこかで起こっているリストラという事実を、茶化すことなくあまりにも現実的に表現した映画だと思ってしまいました。リストラ宣告を受けた人たちの中には、怒りをあらわにする人もいれば、泣き出す人もいる。途方にくれる人もいれば、新たな人生のスタート地点として希望を見出す人もいる。リストラの受け止め方はそれぞれだけど、彼らの人生の目的は似通っていたりもする。
誰もが大切な人やものと幸せな人生を謳歌したいだけなのだから。

If you think about it, your favorite memories, the most important moments in your life…
were you alone? (大切な思い出や人生の門出を思い出してみなよ、いつも誰かと一緒だろ?)

仕事を通じて、人と接して、少しずつ地に足をつけようとするライアン。ハッピーエンドとは言いきれないけれど、人生の岐路に立たされた人々をありのままに映し出した作品です。

空港という人生の岐路に立ったライアン、次ぎはどこへ向かうの?

P.S.
実は私の叔父も似たような仕事をしています。彼の仕事は業務の無駄を見出し効率化すること。つまり、人件費を削って機械化したり、オペレーションそのものを人件費が安い海外に委託するのが彼の役目。彼自身が社員たちに解雇を伝えているとは思いませんが……

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