ついに完結。
心にぽっかりと穴が開くってこういうことを言うんだなぁ。きっと。
10年以上もハリーを追い続け、応援し続けてきた。
彼の壮大な道は、彼とともに私が辿った道を思い出させてくれる。

初めてハリー・ポッターを手にしたのは1999年の夏。アメリカ横断のキャンプ旅行を楽しんでいた私は、あるスーパーで『ハリー・ポッターと賢者の石』のペーパーバックを見つけた。賢者の石は、当時見た赤土や幾層にも重なる岩、夕立で湿ったテントの思い出と絡まる。魔法という未知の世界に足を踏み入れたハリーと、アメリカという広大な大地の前に立ち尽くす自分が重なる。

大学の図書館で借りた『ハリー・ポッターと秘密の部屋』と『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』。課題に追われる毎日を過ごしていた私の小さな息抜きが読書だった。お気に入り読書スポットは図書館の広いロフトで、そこには大きめサイズのソファーが幾つかあった。気持ちのいい土曜の午後は、そこで何度も昼寝をしたのを憶えている。大学生活に少しずつなれ、心に余裕が出てきた頃だ。

新しい学校に編入し、インテリアデザインを勉強し始めた頃。ど田舎から引っ越してきた私は、カルチャーショックを受けていた。T-シャツにジーンズじゃ学校に行けない!と、ファッション誌を参考にしながら、必死に自分を取り繕っていた。ハリー・ポッターを児童書扱いする友達が多い中、唯一の理解者が当時付き合っていた彼だった。『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』は彼の家族から借りて読んだ。新しい恋に心をときめかせるハリーの気持ちが嬉しいほどよく分かった。

彼だった人は夫になり、私達は大学を卒業し日本へやってきた。最後の3冊は日本でのい思い出と交錯する。『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』を夫の両親から送ってもらった直後、彼が病気になり、3日ほど安静にしていなければならなくなった。つらそうにしている彼を励ますために、読み聞かせをすることを決意。声がかすれ、腕が痛くなりながらも、870ページある本を端から端まで読み終えた。

『ハリー・ポッターと謎のプリンス』で、ハリーとダンブルドアが遂行する記憶を辿る旅は暗く険しいものだった。そして突然訪れたダンブルドアの死。あまりにも衝撃的過ぎて、私自身も混乱した。あまりにも多くの死を目撃し、少年から大人へと成長せざるをえなかったハリーの無事を心から願った。自分自身がハリーとともに旅をしていることに気付いた時、読者という立場を超え、物語の一員になれた気がした。

『ハリー・ポッターと死の秘宝』では19年後のハリーたちの姿が垣間見れる。学生だった私も妻になり、母になった。娘は2歳でまだ本は読めないが、言葉がもっと分るようになったらハリー・ポッターを読んであげようと思っている。彼女の時代に、ハリー・ポッターはどのように映るのか……

ある人はこんなことを言っている。
「小説は人生を変えることはできない。けれど、人生に寄り添うことはできる」と。
まさに、その通りだと思う。小説とともに歩く人生は、より濃く、より鮮やかである。

さて、長い間私の人生に寄り添ってくれた素晴らしい本を書いた、J.K.ローリングの近況はというと……

2007年、『ハリー・ポッターと死の秘宝』が出版された際に彼女は、
“I’m sort of writing two things at the moment – one is for children and the other is not for children(現在、二つのものを書いている。ひとつは子供向けで、もうひとつは子供向けではないものを)”と言っている。

そして、今年7月に行われた『ハリー・ポッターと死の秘宝 Part2』のプレミアでのインタビューでは、
“I think I always felt I didn’t want to publish again until the last film was out because Potter has been such a huge thing in my life. I’ve been writing hard ever since I finished writing Hallows, so I’ve got a lot of stuff and I suppose it’s a question of deciding which one comes out first. But I will publish again. In a sense it’s a beginning for me as well as an end.(ハリーは私の人生の中で非常に大きな存在だったから、最後の映画が公開されるまで次の本は出版したくないと思っていた。死の秘宝を書き終えてからもずっと書き続けている。すでに相当の量を書き終えたわ。どれが最初になるかは決まっていないけど、出版するのは確か。これは私にとって終りであると同時に、始まりでもあるの)”と答えている。

彼女のことなら、きっと、人生に寄り添ってくれる新たな小説を出版してくれるに違いない。
待ち遠しくてたまらない。

Comments are closed.