オーケストラ!

クライマックスでは涙が止まりませんでした。
悲しみの涙ではない、心が揺さぶられた時に流す涙。

顔中涙でぐしゃぐしゃのくせに、満面の笑顔。しかも、音楽にあわせて体を揺すっていた私。傍からみたらただの変な人でした。(幸い一人だったので、この醜態は誰にも見られていないはず…)音楽が心に響くってこういうことなんですね。

皆さんには、全身全霊をかけて打ち込める「何か」がありますか?頭の片隅ではいつもそのことを考えていて、そのためならどんな困難も乗り越えられる、愛してやまない何かが。

主人公のアンドレイにとってのそれは音楽。指揮者としての才能を認められ、キャリア絶頂期を謳歌していたアンドレイですが、ユダヤ系の楽団員を匿ったとして、コンサートの真っ只中で、突然の解雇処分を受けてしまいます。

あれから30年。劇場清掃員として働くアンドレイに、神(紙?)のお告げともいえようFAXが届きます。それは、華のパリ、シャトレ劇場からポリジョイ音響楽団への出演依頼状でした。この依頼状を手にした途端に、彼の頭にはとてつもなく突飛なアイディアが浮かびます。30年前に離れ離れになった楽団員を集めて、ポリジョイ音響楽団に成りすましてパリへ行こうと……。
ところが、以前の楽団員に会ってみると、音楽とはかけ離れた世界で働く人もいれば、貧しさのあまり楽器を売ってしまった人もいる。お金は無いし、楽器も無い。あるのは執着的な音楽への愛と、自分を信頼してくれる楽団員たち。

さてさて、この楽団員が笑えるほどクセのある人たちばかりで。中でも一際目立っていたのが、アンドレイの妻、イリーナ(アンナ・カメンコヴァ)です。卑猥なことも平気で口にして、旦那を尻に強いてしまうような女性ですが、アンドレイのことを一番理解していて、彼の大切な心の支えです。30年間の間、清掃員として屈辱的な生活を送ってきた彼を信じ続け、支え続け、勇気づけてきたひと。

アンドレイが自分の計画を疑い始め、自信をなくしかけたときも、「離婚するわよ……パリに行かなければ」と、最後の一押し。ここぞっていうときにド迫力で物を申してくれる人って見ていて気持ちいい。

こんな風に夫を支えられればなぁ…なんて、ちょっと思ったりもして。

イリーナに共感している私の中に、ある結末が過ぎりました。何故、アンドレイはソリストにアナ=マリー・ジャケを指名したの?彼女のCDや記事を大事そうに箱の中にしまってあるのはどうして?これって、もしや…… ちょっと荒っぽいけど、これほどまでに献身的な妻がありながら?!

偽りポリジョイ音響楽団のコンサートの成功を祈るとともに、アンドレイがどのようにして真実を告げるんだろうと思いをめぐらし、ダブルでハラハラドキドキ。さて、アンドレイの魂は楽団員たちと、そしてアナ=マリーと共鳴し合えるの?

これは、決して夢をあきらめず、自分を信じ続ける主人公が、最愛の仲間とともに何かを成し遂げる感動ストーリー。

クライマックスに聴き入って下さい。

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