先日ある幼稚園の説明会で一人のお母さんが、
「息子は難聴で言葉の発達が遅いから、幼稚園に入れるのを1年遅らせることにしたの……」と教えてくれました。私の娘はその息子さんと公園でよく遊んでいて、私は彼が小さなころから知っていました。運動神経が良くて、やんちゃな男の子。お母さんのその言葉を聞いたとき、子どもの為を思って長い間悩み、考え抜いた結論なんだろうなぁっと、ずしりと重いものを感じました。

「生まれてきた子どものためなら……」

母親になると日々この言葉が頭を過ぎります。子どもが転ばないように、怪我をしないように、つらい思いをしないように、母親は子どものためなら自分を犠牲にしても、時には嘘をついても子どもを守ります。

そんな一生懸命な母親の姿を描いたのが『Dear フランキー』という映画でした。

あらすじは、
父親に手紙を書き続けるフランキーの為に、シングルマザーのリジー(エミリー・モーティマー)は、自ら息子宛に手紙を書き始めます。父親は船乗りで世界中を旅していると。けれどある日、父親が乗っていると設定した船が本当に地元の港へ入港するというニュースを聞き、彼女は一大決心をします。それは、赤の他人を雇ってフランキーの父親になってもらうこと……

早く真実を伝えようと自分に言い聞かせながらも、フランキーからの手紙を楽しみにしているリジー。
映画の中でリジーが、
It’s the only way I can hear his voice. (彼の声が聴けるのは手紙の中だけなの)
というシーンがあります。
実はフランキーは耳が聞こえなく、言葉も上手く喋れない。息子に嘘をつき続ける後ろめたさはありながらも、彼の心の声を聞きたいばかりに、父親からの手紙を書き続けてしまう気持ち、すっごくよく分かります。手紙の言葉はフランキーの心の言葉なんですね。

難聴の息子を長い間守ってきたリジー。「赤の他人」は、リジーとは違った幸せや心地よさをフランキーに教えてくれました。「赤の他人」と一緒に楽しんでいる息子を見て、少しだけ心の余裕ができたのかもしれません。そして、息子が子どもではなく少年になりつつあることを理解します。フランキーとリジーの心の成長が鮮明に伝わってくるストーリーです。

完璧な母親なんてどこにもいない。だけど子どもの為、家族の為を思って一生懸命に生きていれば、きっとそれが一番幸せな形なんだなぁと思わせてくれる映画でした。

鑑賞後、息子さんのことを教えてくれたお母さんに心からのエールを送りました。そして私自身も、子どものすべてを受け止め、成長を温かく見守れる母親になれるように努力しようと思うのでした。

 

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